沈殿層からのつぶやき〜
s i n k i n g s l o w l y
 
 
本棚と就職の話




机の前に座る。

前方を見上げる。

本棚がある。

漫画。小説。参考書。雑誌。

厚い本。薄い本。高い本。安い本。

造作なく置いてある。

何冊くらい入ってるのかな。



本棚を見る。

どれをどこまで読んだっけ。

この本は最後まで読んだ。

あの本は何度か読み返した。

こいつは途中までしか読んでなかったかな。

あいつは読んだはずだが内容を覚えていない。



あ。

俺、本棚を見てるんじゃないや。

本棚に見られてるのが俺の方なんだよ。

無造作な俺、飽きっぽい俺。

時にはほんの少しだけ集中する俺。

安っぽい俺、見栄を張る俺。

全部見られてたんだ。

この本棚に、机の前の俺、

ずっと見られていたんだ。

嗚呼。




てな感じの文章を、
文藝春秋の入社試験の作文にて書きました。

お題は「本棚」でした。
ええ。就職活動の想い出です。



この作文審査は無事通過しまして、
二次試験は赤坂プリンスで筆記試験。

ここの試験も面白かったですよ。
配られた紙に五十人の有名人の名前が書いてあって、
「二十文字程度でこれらの人物の説明を記せ」と来たもんだ。



青木雄二、ガルリ・カスパロフ、柳美里、旭鷲山、、、
ほかには、、んーと、覚えてないや。
微妙なポジションの色々な名前がつらつらと並んでいて、書け、と。



旭鷲山はわかる。
うん。技のデパートだよ。
こいつをちょっと気の利いた20文字で、
紹介してやればよいわけだよな。


柳美里さん。
芥川賞だっけ直木賞だっけ。
えーとえーとえーとえーと。
いいや、誤魔化して書いちゃえ。


ガルリ・カスパロフ・・・
人名かよ!誰だよ!
そんなツッコミも聞こえてきそう。
でも僕はたまたま知っていました。
そう、ロシアのチェスチャンピオンで、
スーパーコンピーターに18分で負けた人だ。


ふふふ。アドバンテージ!
周りの奴らはきっとお勉強エリートだから、
こういう問題はわかるはずが・・・


・・・

・・・みんな、すっげー書けてるっぽい。
負けずに書かなきゃ落選だよ!
ええと、次の人の説明しなきゃ。ええと。


ええと。

青木雄二って誰だよ。
知らないからゴルファーってことにして出したよ。
やれやれ・・・



試験終了後に前の席の女がその友達と、
「ペルー大使館で軟禁されていた大使のことだよねー。」
とか答え合わせしてやがる。


ああ!青木大使のフルネームって、
青木雄二だったのかぁ。


ふ。
負けたよ。
ゴルファーは青木功だよ。
何にも書けないよかいいじゃんか。ふん。



その帰り道、
本屋さんで「ナニワ金融道」単行本表紙の、
作者名とおぼしき場所にある青木雄二の4文字を偶然発見。

「プププあいつら馬鹿だなー」って思いました。

僕はいいの。いいのよ。
勝利したような気分で気持ちよく床に就く六月の夕暮れ。



文藝春秋からは、次の面接のお知らせは届きませんでした。


 


 

ではまた。


 


帰る

 

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