「ずっと知らなかったんだけどさ。」
「どうしたの?」
「情報統制って奴は恐ろしい。」
「もしかしてイラク誘拐事件絡みの話?」
「俺たちは何も知らされずに生きているんだ。」
「それとも社会システムに潜む陰謀の話?」
「いんや、メリーさんの羊の話。」
「・・・はて?」
「そんなやって余裕ぶっこいてるけどさ。恐ろしいよ。」
「文字通り牧歌的な話題だと思いますが。」
「だからお前はガキだって言うんだ。大人になれよ!」
「童謡の話なんだから、そんな認識でいいんじゃない?」
「いや、俺は真実に気付いてしまった。」
「真実って?」
「メリーさんの羊って、よく唄っていたよな。」
「うん。」
「メリーさんって、何者なのか知ってるか?」
「飼い主じゃないの?」
「いや、歌詞においては正体が明らかにされていないんだ。」
「そうだったっけ?」
「のんきだな君は。この恐ろしさが何故わからない!」
メリーさんの羊(ひつじ)
作詞(訳詞)者 高田三九三 アメリカ童謡
1 メリーさんの羊(ひつじ) めえめえ羊
メリーさんの羊 まっ白(しろ)ね
2 どこでもついてく めえめえついてく
どこでもついてく かわいわね
3 あるとき学校(がっこう)へ 学校へ 学校へ
あるとき学校へ ついて来(き)た
4 生徒(せいと)が笑(わら)った アハハ アハハ
生徒が笑った それを見て
5 先生(せんせい)はかんかんに おこって おこって
先生はおこって おい出(だ)した
6 メリーさんは困(こま)って 困って 困って
メリーさんはしくしく 泣(な)き出した
「・・・歌詞ってこんなだったんだ。」
「どうだ、恐ろしいだろう。」
「牧歌的な気分が4上がりました。」
「ドラクエ風に言わないでよろしい。まだ恐ろしさがわからんようだ。」
「まったく解りませんが。」
「いい加減に大人になれよ!
この歌によって子供たちの将来が脅かされているんだぞ!」
「そう言われても何が何やらだよ。」
「この歌詞からメリーさん像をプロファイリングしてみろ。」
「んーと、学校に行く人なのかな。」
「ダメだ君は。目を付けるポイントが岩鬼のストライクゾーン程ずれてる。」
「ならば泣き虫ってことを言えばいいのかな?」
「それじゃあ華原朋美の音程くらいズレてるよ。ひどくなってる。」
「・・・そんじゃどこに目をつければいいのさ。」
「名前だよ。名前。そこを見なくちゃダメだよ!」
「メリー?」
「そう。メリー。よく見ろよ。」
メリ → 刈
「・・・はい?」
「まだわからんのか!
羊の毛を刈る際に使う『刈る』という漢字は、
このアメリカの童謡から生まれたんだ!」
「そうかなあ?」
「つまり俺らは、気付かぬうちにアメリカ語を使わされていたのだ!」
「はぁ。」
「日本語を使っているつもりが
いつの間にか欧米文化を使用させられて。
子供の頃の俺達は騙されていたんだ!」
「思いこみが激しいですね。」
「ああ恐ろしい。こんなに恐ろしい思いをさせられたのは、
SASUKEの第一ステージのレイアウトが変わることを知らされた際の、
自宅にSASUKEセットを組んでしまったおっさんの
落胆っぷりを円に換算して計算してみたとき以来だ!」
「あなたから全方位に間違いのベクトルが出まくってますよ。」
「とにかく、日本語の美しさを守ろう!日本語万歳!美しき漢字万歳!」
「思想が右よりになってきた所、なんだけどさ、
漢字って中国発祥じゃあないのかい?」
「にほんごばんざい!うつくしいひらがなばんざい!」
「子供っぽくなってるって!」