「おう。ひさしぶり。どうしたんだよそのマスク。」
「ああ、花粉症でさ。辛いんさ。」
「それは大変だね。」
「大変だよ。鼻水が止まらないし、目も充血するし。」
「ふーん。」
「なんだよ他人事って顔しやがって。
お前は花粉症になったことないのかよ?」
「ないよ。だってさ、花粉症なんてさ、元凶は花粉の粒じゃん。」
「そうだよ。それがどうかしたか?」
「だからさ、花粉の粒なんか、全部よけちゃえばいいんだよ。」
「なんだよそれ・・・。」
「こう、さ。ほら。華麗なフットワークで。」
「”雨粒を全部よければ雨に濡れなくって傘いらずなのよ!”って
そんなことを思いついた小学生かおまいは・・・。」
「そう!小学生の頃、グラディウスで鍛えたのが、
今になって役に立っているんだよ。」
「お前って話半分しか聞かないのな。
確かにあのゲームは敵の弾がアメアラレだったけど・・・」
「はっ!ほっ!ふやっ!」
「ほんとによけてるよ。」
「↑↑↓↓←→←→BA!」
「裏技使うなよ。」
「上!上!下!下!左!右!左!右!B!A?」
「いや、大声で繰り返し言った所で、
お前にオプションとかつかないから。」
「でもまあ、こんな感じで避けきれば
花粉症にはならなくって医者いらずなのよ。」
「進歩してねえ奴だなお前は。
後半のは目医者さんみたいになってるし。」
「でも、慣れてくるとゲームも花粉も同じだぜ。」
「それはないよ。」
「調子がいいと、花粉が止まって見えるんだ。」
「今度は川上哲治かよ。昭和世代め。」
「でもまあ、花粉避けはもう完璧になっちゃったね。俺は。」
「ああそうですか。よかったね。」
「だけどお前、花粉の粒をクリアしたら、
次のステージがあるんだぜ。」
「次のステージ?」
「初めの花粉症ってステージは、花粉の粒が飛んで来るんだ。
そして次の”不眠症”ってステージは、不眠の粒が飛ぶんだ。」
「不眠の粒ってなんだよ!」
「これがまた、俺の動態視力が追いつかない。
全然避けきれないんだよ。」
「そんなもん、花粉以上に発見不能だよ!」
「クリア出来ないのが悔しくて、
毎晩あんなにグラディウスで練習してるのに!!」
「単にファミコンやって夜更かししてるだけじゃんか!」
「フハハハハハ!絶対クリアしてやる。
絶対に俺はクリアしてやるんだああああああ!」
「おい!しっかりしろよ!突然どうしたんだ!」
「不眠症ステージで不眠の粒を避けきれないと、
その次の精神分裂症のステージで放たれている、
精神分裂の粒を避けることが出来ないんだあああああ!」
「なんなんだよ全くもう。」