沈殿層からのつぶやき〜
s i n k i n g s l o w l y
 
 
学歴長者とダメ人間、そして友情の話




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ええと
学生時代のお友達の結婚式に出ることになりました。
ひきこもりライクな都会型ライフスタイルを謳歌する自分としては、
久々のイベントとなる感じです。
しばらくぶりに会う人も多くなりそう。

そんな中、ふと、
あいつも来る、という話を聞きました。
今日はそのあいつ---遠藤くん(仮名)についてと、
彼にまつわる僕ら仲間たちのちょっとだけ苦い想い出。
そんな青春群像を描いてみることにします。
■■■■



僕が最後に遠藤に会ったのは、
大学四年生の夏休み明けだったかと思います。
どちらかが会うのを避けていた訳ではなく、
ちょっとした偶然で、それ以降会うことがなかったのです。


あのころの僕らダメ学生仲間は、

 A : 少数の就職が決まった奴、
 B : 決まってなくて焦っている奴、
 C : 決まってなくて焦っていない奴。

自然とそんな3つの人種に別れていきました。


それぞれの仲が悪かったということはありません。
どの人種も、見えない明日にうち震えて、
それをごまかすために、
情報交換と称しては飲み屋「酔の助」へ、
四者会議と称しては雀荘「和光」へ、
ひとりで考え事をすると言ってはパチンコ屋「人生劇場」へ、
トボトボと出掛けていったものです。


そんなダメ学生運命共同体に、
ある日ひとつのニュースが入ってきました。


「おい、遠藤が東大の大学院に受かったらしいぞ!」


どよめく僕ら。

確かに彼は、大学院に進学するという表明をしていました。
僕らは内部進学のような形で、
僕らの大学の院に行くのだろうな、と思ってました。

でも、彼は本当に東京大学の大学院に受かっていました。



これが、東大は東大でも、
東京モード大学とかだったら、
普通のお笑いネタになるところなんです。
でも、彼は本当に東京大学の大学院に受かっていました。




とうだい、かぁ・・・


いしいひさいち型貧乏ダメ学生ライフを
これでもかというぐらい満喫してきた僕らは、
彼の成功者への道を喜び、それなりに妬み、
自分の人生の暗さを、
そしてその暗さに灯りを点さなかった自分を、
呪ったものでありました。






遠藤くんとは、

一緒のサークルで一緒に研究もした。失敗もした。

終電がなくなって身も心もボロボロになった時に泊めてもらった。

一緒にパチンコに行って怪しげな台を打って一緒に大負けした。

一緒にサッカーチームを作って某エリート大学にボロ負けした。

そんな時は決まって、僕らのダメ人間っぷりを肴に
お酒とかを飲みに行ったものです。



数々のダメな想い出が頭をよぎります。
でも、そんなダメな日常の中、
遠藤くんはちゃんと前に歩いていたのです。
 


僕らの仲間から、とうだい が。
めでたいじゃないか。
ダメ人間共同体の僕らの仲間から、とうだいが。
おい、とうだいだよ、とうだい
めでたいじゃないか。
めでたいじゃないか。









・・・なあ、俺達って、
「ダメ人間」って部分で繋がっていたわけじゃないんだな。

僕らのつながりは、
「ダメ人間」であるかどうかじゃ、ないんだよな。

僕ら、
「ダメ人間」に浸りすぎていたんじゃないかな。

そうだよ。
「ダメ人間」である自分と仲間に、甘えていただけなんだよ。



そう。
前に進む勇気を陰干しして脳裏に追いやり、
僕らは仲間と一緒に、ただ四年間、
前に進むことを拒否し続けていました。


ダメ人間という顔を作りあげ、
同胞の顔を見ては自分と同じ顔であることに安堵し、
同胞と同じ顔をしては皆を安堵させる。
そんな湿気た線香花火のような四年間を送りました。


同じ顔をし続けることが、
僕らを繋ぐ信頼だと思っていて。
陰干しで干からびた前へ進むための勇気は、
いつかきっと水でもどせるものだと言い訳をしながら、
もうダメなんだろうな、とうっすら気付いていて・・・。




でも遠藤くんは、そんな僕らに新しい勇気をくれた。
そうか、僕らも、前へ進んでいいんだ。
ありがとう遠藤くん。
僕らも前に進むよ。
ありがとう。本当にありがとう。




でも、
気付けば僕らと遠藤くんの間には、
とても大きな差がついてしまったように思えました。
マラソン大会で一緒に走っていたはずの友達が、
はるか地平を行くのがやっと見えるくらいに。



ひとり先を行く遠藤くんは、
呼んだら僕らの方を振り向いてくれるだろうか。
だってあいつ、とうだいだぜ。




いや、遠藤くんだったら振り向いてくれるよ。
たかがとうだいだぜ。そう、たかが・・・。



 

一人の友人を巡って揺れ動く僕らの心。
そこで、僕らはちょっとした賭けをすることにしました。

彼が、とうだいとは言え、心はまだ僕らと共にあるのかどうか。
僕らの繋がりはダメもエリートも超えた確固たる何かに因るものなのか。
それとも、「ダメ人間であること」だけだったのか。
それを確かめたくって、ひとつ作戦をたてたのです。




それは、
ちょっとした僕らの希望を彼の近辺にリークして、
彼にやんわりと伝えてもらうのです。
その内容というのは、


僕が遠藤くんに「おーい、遠藤〜!」と、声をかけます。
そしたら彼に↓こう↓答えて頂きたい、というものです。
 

「神山ちゃーん、気安く声をかけないでくれるかな?
 だって俺、とうだいだぜ!?」

 

言われてみたくないですか?このセリフ。

なかなか簡単に言って貰えるセリフではないじゃないですか!
でも、テレビとか漫画とかではこういう系統のセリフ、
よく見るじゃないですか!
これを言われるのが小学生のころからの夢でした。



彼がまだ僕らを仲間だと思ってくれているのなら、
きっと言ってくれるはずです。
こうやって僕らを踏みつけにするというお約束を、
きっと解ってくれると思ったのです。

僕らの夢をきっとかなえてくれると思ったのです。
 
 


 

で、様々な偶然が重なり、
彼とは会うことなくその後の数ヶ月が過ぎ、
彼とは会うことなく僕らは大学を卒業し、
皆が散り散りになりました。

遠藤くんはとうだいの修士課程を卒業した後、
短期間なれどケンブリッジに留学していたと聞きます。


ケンブリッジ・・・






5年ぶりに会う彼は、今度こそ僕らに、
「だって俺、ケンブリッジだぜ!?」って
言ってくれるのでしょうか。
僕らは時間も身分も超えて、
まだ繋がっていられるのでしょうか。


あの時の仲間で、結婚するのは二人目です。
ゆっくりだけど少しだけ、ほんの少しだけ僕らは、
前に進んでいるような気がします。


 
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結果報告は、後日。
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帰る

 

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